2019年11月13日水曜日
夕方、たつこが湖畔を歩く…
先日開催の「田沢湖・姫観音像開眼80周年記念事業」で、地元の千葉治平さん(昭和40年に直木賞受賞)が書いた田沢湖風土記を読みました。その中に、伝説の湖神たつこが夕方に湖畔を歩く姿を見たとの記述があって…。
田沢湖畔には、たつこ伝説由縁の像が4体あります。姫観音像もその中の1体で、昭和14年に建立されました。姫観音像の建立には幾つかの目的があったと伝わっています。田沢湖は電源開発と灌がい用水の確保で、上流部の玉川温泉から強酸性泉を導水し、クニマスをはじめ多くの魚族は死滅しました。この工事に携わった朝鮮からの作業員も事故で亡くなった方々がいたそうです。激変する田沢湖を憂い悲しむ湖神たつこを慰めるため、また亡くなった方々の慰霊のため、そして田沢湖の再生を願い、周辺寺院の住職達が中心となって淨財を募り、姫観音像が建立されました。
さて、千葉治平さんの田沢湖風土記です。湖畔を歩くたつこの記述は下記の通り。
~工事が大分進んだ時のこと、夕方になってハッパの音がやみ、湖水が黒味がかり、木立ちの影がおぼろになるころ、ある鮮人の土工が、ワラダ沢の岸辺で、妖しい女を見かけたのです。女は幻のように美しく、長い髪を垂らして静かに岸辺を通っていったそうです。その土工はタッコひめではないかと気に病んで仲間に話したのですが、間もなくハッパに打たれて死んでしまいました。タッコひめが夕暮れに出現するという噂は村にも伝わってきました。湖の神聖さを汚す工事をしている者には必ずタッコひめの神罰が当るのだと私たちは信じていました。湖水を荒されるのを悲しく思ったタッコひめが岸辺をさまようのだから絶対見てはいけないと、村人たちは話していました~。
千葉治平さんの田沢湖風土記は、たつこに会えば死んでしまうと言うショッキングな内容です。でも私は、たつこに以前から会いたいと思っていました。たつこだって、きっと現在の田沢湖再生プロジェクトに言いたいことがあるでしょうから。
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