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2020年1月31日金曜日

まちづくり日記「心棒と辛抱」



 広報せんぼくに連載中のまちづくり日記です。明日発行の2月1日号では、来年度の予算づくりで大切にした心構えなどを綴りました。お時間のあるときにお読みください。


 来年度の当初予算づくりが続いています。以前から継続してきた事業、数年続けてきたけれど成果が見えない取組み、新サービスのアイディア、法律の改正に連動した国の政策、人口減少対策で必要な長期プラン…。そんな一つひとつを丁寧に検討して予算を作成します。予算は市民の願いを叶える設計図ですから、市役所で一番に重要な仕事と言えます。私は職員に対し、「国・県の情報収集はもちろん、市民の声を再度しっかり聞いてください」とお願いしています。厳しい財政事情です。最小予算で最大効果を上げるには、市民や団体の皆さんとの信頼関係が大切です。


 こんな作業を繰り返し、年末まで財政課査定が終了しました。査定は事業が本当に必要か、金額の算出が適切か、実現の条件が整っているかなど、効果を予測した総合力で判断します。財政課査定の次は市長査定です。ここ数年、市長査定は職員との激論の場になっています。職員は市民の思いを背負って査定に臨んでいます。しかし計画が未熟だったり、財源の調達が困難だったりで予算を計上できないことも多々あります。そんな時は本当に申し訳なく残念です。反面、予算はゼロでも、できることを探して取組みたい、そんな主張をする職員もいて頼もしさを感じます。


 最近、私は職員に私自身の予算査定の心構えを話しました。稲盛和夫さん(京セラ創業者)がよく使う言葉で、「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」です。意味は文字の通りですが、もちろん職員を小善と言っているのではありません。小善は私の心の中に潜んでいます。それは市民に対する迎合、あるいは偽善です。でも、仙北市に必要なことは目先の小善ではなく、市民が住み続けたい、将来市民も魅力的だと思う持続可能なまちづくりではないでしょうか。


 そのための心棒が必要だと…。借りて来た心棒ではなく、既にある心棒を太くする取組みです。豊富な観光・交流素材を高度活用した経済政策、人材育成での担い手確保、医療の安定化などは、もっと太くしたいと思います。この領域に予算を配分すれば、他の領域は少し我慢が必要です。これは心棒をつくる辛抱です。
※写真は今朝(1月31日)の神代。雪がありません。

2019年11月15日金曜日

まちづくり日記161「今こそ地方の時代」



 広報せんぼくに連載中のまちづくり日記です。11月16日号はSNSの浸透が情報革命になって、もう東京に行かなくても夢は叶うよと、そんな内容です。お時間のあるときにお読みください。


 今まで〝地方の時代〟を感じたことはありません。実態のない流行語のように、国内にあふれた現象は何度か経験しました。例えば地方分権の推進議論で、または省庁再編や首都移転議論で、あるいは国政選挙の街頭演説などでお馴染みです。
 提唱者は、神奈川県知事だった長州一二さんだと言われています(地方自治総合研究所コラムより)。もう40年も前のことです。長州さんは横浜市が開催したシンポジウムで、「社会・経済・文化創造の在り方を地域視点で捉えながら、今後は委任型中央集権から参加型地方分権へ転換を進めることが重要」と指摘しました。その後、全国の改革派と呼ばれる行政トップが〝地方の時代〟を連呼して、多くの選挙戦で勝利を収めました。後年になり、国も小泉政権で「三位一体改革」を推進しましたが、各省庁の権益温存主義や族議員の壁に阻まれて、難産になった幾つかの政策がありました。
 しかし、現在は当時と全く違う世の中です。インターネット社会、スマホ社会の成熟が、今になって、やっと〝地方の時代〟を可能にしたと考えています。例えば、観光の領域では「八幡平ドラゴンアイ(仙北市玉川)」に訪れる海外からの観光客、大人気の秋田内陸縦貫鉄道「ごっつぉ列車」、開店と同時に売り切れになる「まぼろしの田沢ながいも」、武家屋敷通りの真っ赤なポスト…、どれも地域発信の情報で、それを観たり食べたり撮したりする目的だけで、世界中の皆さんが移動します。仕事だって、電車に揺られて会社に出勤しなくても自宅のコンピュータで十分可能です。テレワーク(インターネットを活用した時間や場所に拘らない就労形態)は、働き方改革の切り札とも言われています。仙北市では数年前から実証実験を繰り返していて、優しい自然環境、美味しい食べ物、空き家の多さ(皮肉ですが…)等で高い評価があります。もう「東京に行かなければ夢が叶わない」なんて、過去のことです。
 来年は東京オリンピック・パラリンピックです。混雑する期間、首都から地方に移って、仕事をしようと考えている民間企業のお話しを聞きます。が、私は「それってオリンピック期間に限った話しじゃないでしょ」って言っています。
※写真は田沢湖クラフト市「ゆるりマーケット」から。


2019年9月20日金曜日

まちづくり日記157



 広報せんぼくに掲載している〝まちづくり日記〟です。9月16日号には「過疎法と新たな地域価値」と題して、私の考えをまとめてみました。お時間のあるときにお読みください。


 現・過疎法が令和3年3月に失効します。そもそも過疎対策は、昭和30年代の高度成長期、地方から都市部に大規模な人口移動が起こったことで、人口が減少した自治体の救援策として法制化されました。当時の過疎は、人口減少で地域の生活水準が劣化したり、生産活動が減退するような状況を定義していました。


 ところで、過疎法は10年間の時限立法として成立しています。最初の過疎法は昭和45年の過疎地域対策緊急措置法、次いで昭和55年の過疎地域振興特別措置法、次いで平成2年の過疎地域活性化特別措置法、そして現在運用する平成12年の過疎地域自立促進特別措置法です。改正の度に用件を新たに見直し現在にいたっています。さて、日本は10年ほど前から人口減少国に転じました。ひと昔前、過疎は農山漁村の問題と受け止められていましたが、現在は大都市部に過疎が拡大しています。総務省が発表の人口推計値では、今年3月と昨年3月の比較で24万5千人が減少しました。秋田県の数市が消滅するボリュームです。さらに河北新報は来年から仙台市が人口減少することを伝え、東京都も令和7年をピークに人口減少が始まると指摘する研究者がいます。この現状下で、国は過疎問題懇談会を中心に、新・過疎法の議論を進めています。先ごろ発表の同懇談会中間報告には、「~国全体が人口減少となる中、過疎地域は先進的な少数社会を目指す~」と、あります。これまでの過疎地域に求めていない、新たな価値、新たな目標です。


 仙北市は、全域が過疎地域に指定されています。これまでも道路改良、温泉施設整備、病院建築などのハード系や、まちづくり活動、公共交通運営費負担金、医師確保対策などソフト系も合わせて過疎債をお借りし、その返済も地方交付税で国から7割程度を支援いただくなど、なくてはならない法律・制度です。令和3年以降の新・過疎法は何としても法制化いただきたいことを強く要望します。と同時に、地域が持つ価値を見逃さない、そんな視点を市民が磨くことも必要だと感じています。この夏、田沢湖刺巻集落が取り組んだ「とある村の夏休み」から、それを教わりました。
※写真は作家・西木正明さんのご生家。