2014年7月30日水曜日

家族と災害の両立?

秋田県市町村長防災危機管理ラボに参加。場所は秋田市のルポールみずほ。市の加古信夫危機管理監も一緒です。昨年起きた供養佛の土石流災害から1年、6人の市民の命を救えなかった反省と教訓から、市の防災力は格段に進歩しています。でも、もちろん充分ではありません。何が足りないのか、何を活かせたのか、検証の思いもあって参加しました。

 堀井副知事のあいさつの後、元兵庫県副知事の齋藤富雄さんが講演(写真)をしました。とても参考になったので、その一部を紹介します。

 ~役所に勤務していると、いざ災害の時には家族をおいて災害現場に出ていかなければならない場面ばかりです。それでも家族として信頼を築けていたなら、家族崩壊は起こりません。公務員としての仕事を全うする覚悟はとても尊いものですが、それを家族が理解できているかどうか、ここが分かれ目になります。
 自分は阪神淡路大震災の時、県庁では知事の秘書課長という肩書きでした。自分の家はかろうじて壊れませんでしたが、近所は火災が発生し、倒壊した家屋の下敷きになっている人が何人もいるような惨状になっていました。そんな中で家族の無事を確認が終わった後、「知事は無事だったか」と職務の重要性を思い出し、自転車で1時間ほどかけて知事公舎に向かいました。幸い、知事は無事で県庁とも連絡が付いていることを知り、ホッとしました。しかし、それがいけなかった。自分は「家族のことが心配なので、家に帰ってもよいでしょうか」と知事に尋ねました。知事は「君の家の周辺が一番大変なようだから帰りなさい」と言ってくれました。その言葉に甘えて帰りましたが、どうしてあの時、知事を自転車の荷台にでも乗せて県庁に送り届けなかったか…。自分の判断ミスで、その後、知事は県庁への登頂時間が遅れ、県民から大変なバッシングを受け続けたのです。一生涯の悔やみです。

 さて災害が起こったら、その対応として事前の災害マニュアルに従って行動することはとても有効です。ただ、そのマニュアルは本当に対策ができるレベルのものか、これは疑問の多いところです。管理職が集まり、対応を始めようとしても、コピーの電源を入れることができない、非常用毛布の場所が分からない、避難場所の鍵の管理先が分からない…。それでは何にもならない。戦力になるのは若い職員でしょ。でも若い職員は時間外がかかるからみたいな気持ちが働いて、召集にブレーキがかかる、だれも動かない。それではマニュアルがあっても意味がない、皆さんどうですか、そんな状況ではありませんか。以前、兵庫県庁で、担当者機密で誰にも情報を出さないで、抜き打ちの災害訓練を実施しました。庁内外からもの凄い苦情をいただきました。マスコミからは取材に行かれなかったとか言われました。訓練の結果はグダグダでした。それも叩かれました。でも、抜き打ち訓練は災害が起こったときのリアルな体験です。大成功した訓練大会に何の意味がありますか。さらに思い込み、過去にこんな災害を体験したのだから、対策に見通しがあると思い込んでいる市町村も多いのですが、災害には多くの特殊な事情があって、対策にはそれぞれのやり方がありますから、災害の数だけ対策があると考えることが大切です。大島の例を見ても分かります。大島では火山対策は充分だったかも知れませんが、土石流ではその経験は生かされていません。

 市町村民の生命と財産を守る責任は、市町村長です。そこの行政組織です。国や県がいくら災害基本法を改正しても、実際の対応は市町村なのです。そもそも比較基準もない各市町村の防災力を、どんな目標数値を設定して、どんな手法で改善するのか、それすら明らかになっていない、そんな国が日本です。もっともっと政府に市町村の災害対応に財源の配分とか、その手法の移転を要望すべきです~。

 本当に大切なお話をいただきました。

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