2025年11月25日火曜日

石になったおばこ


 昔むかし、上田沢の源七という大百姓に小夜という娘がいました。いつも小夜は名前ではなく、おばっこ(末っ子の意)と呼ばれて皆から可愛がられていました。そんな小夜には弥兵衛という好きな人がいて…。

 弥兵衛は武士でした。ある年の春、父は「早く嫁をもらいなさい」と言い残し死んでしまいます。弥兵衛は自分を好いてくれる小夜の気持ちを確かめるため、「五月の節句に臼を使いたいので、家まで背負って持ってきてくれないか」と頼みました。恋しい弥兵衛の頼みです。小夜は山の向こうの弥兵衛の家まで、臼を背負って歩くことにしました。しばらく歩き峠にさしかかった辺りで…、なんと荷縄がほどけ臼は谷底に転げ落ちてしまったのです。小夜はどんなに悲しかったでしょう。一人泣き伏し、ついには石になってしまいました。

 弥兵衛はいくら待っても来ない小夜を心配し、小夜の家に向かうことにしました。そして峠の辺りで石になった小夜を見つけます。弥兵衛は自分の浅はかさを悔み、小夜の後を追って石になったと伝わっています。
※このおばこ石は実在します。
※写真はイメージです。

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