2014年6月19日木曜日

一般質問②阿部則比古議員

Q:昨年7月に里山資本主義と言う本が発刊されて以来、全国で森林資源に対する関心が高まっている。国外などでの成功事例もあり、国内でもペレットストーブやボイラーは大分安価になってきた。いよいよ機が熟した。先進地のオーストリアなど、総合産業研究所に研修させてはどうか。

A:里山資本主義は、大変に興味深い経済概念・人間の暮らし方だと思います。この考え方を一言で言うと、「貨幣を介した等価交換のマネー資本主義」から、「貨幣換算できない物々交換」、つまり里山資本主義への社会全体の変質の提唱です。「大量生産・安定品質の規模の利益」から「個人個人がそれぞれの生き方を選択する贅沢」の享受へ、または「分業の徹底と成果品の流通」から「一人で何役も楽しむ人生の6次化」の進め、そんな受け止め方をしています。
 本書やNHK広島放送局が制作報道した「里山のチカラ」などで、度々登場する和田芳治(よしはる)さんは、エコストーブを全国に広める伝道師という立場で取り上げられていますが、実は和田さんは広島県総領町の教育長だった方で、「過疎を逆手にとる会」の会長も努めていました。私も個人的に「過疎を逆手にとる会(通称:カソサカ)」とのお付き合いがあって、その考え方に共感し活動していた時代もあります。今回の里山資本主義は、過疎地が未利用資源の宝庫と言う捉え方をして、自らの人生と周囲の人間関係を構築した方々の、実に30年以上にわたる活動がベースになっているものと感じます。
 ご指摘のオーストリアのギュッシング市を中心とした木質ペレット取り組みですが、これも大変に興味深い内容です。本書にも「里山のチカラ」にも登場している中島浩一郎さん(岡山県真庭市:銘建工業代表取締役)は、「新しい目線で山を見ることが大切です。山しかないと言う考え方を捨てると、山がエネルギーの宝庫に見えてくるはずです」と話しています。全くその通りです。その中島さんは、木材をエネルギー転換することと同時に、コンクリートに負けない、そして軽い(軽いと言うことは断熱力に優れている)新たな建材としてCLT(クロス・ラミネーテット・ティンバー)を活用する取り組みにも挑戦をしています。国土交通省での耐震テストでも良好な成績だったことから、高層階建築がこの新たな木材CLT(クロス・ラミネーテット・ティンバー)で実現する日がそう遠くないと思います。
 ところで仙北市内の木材関係者にお聞きすると、先を走る岩手県の現状では、ペレットの使用量は年々拡大をしているそうですが、その何倍ものスピードで薪需要が伸びているそうです。定時・定量使用が可能なペレットの優位性にも増して、薪需要が増えている要因の中には、ペレットの生産体制が追いついていないという現実もあるだろうと話していました。一方、林野庁では戦後に植栽したスギが既に伐採時期に入っていて、里山資本主義的に言うと「ニューノーマル(新しい普通)」層が増えることで、里山自体の価値が復興し、木材需要は再生可能エネルギーや新建材としての需要が伸びれば、再造林事業を振興できる目算も持っているようです。
 仙北市が先駆けて取り組んでいるバイオエネルギー関連事業は、この里山資本主義にある「金に換えることができない価値」の創出にも挑んできましたが、その価値を市民の皆さんに上手にお伝えできていないもどかしさを感じています。
 本書の執筆者の一人、藻谷浩介さんは、「仮に今のマネー資本主義的な繁栄がゆっくりと後退して行くようなことがあっても、里山資本主義的な要素を少しずつ取り入れていけば、生活はそんなに困ることはない」と言っています。
 ご指摘の事業に取り組むことが、根底に何を求めるのか、それはマネー資本主義的発想なのか、里山資本主義的発想なのか、成果は何に求めるのか、大いに議論したいと思います。必要となればオーストリアでもどこでも視察に伺い、市民の幸せづくりに労を厭わない覚悟です。

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