2025年6月17日火曜日

始まりの泉


 18歳になった年の春、たつこは友だち2人と山菜を採りに山に入ります。でも本当は大蔵観音さまのお告げにあった霊泉を見つけるためでした。はぐれたフリをして北へ北へと足を進めると、たつこの目前に小さな泉が…。

 この写真がその潟頭(かたがしら)の霊泉です。たつこは喜びます。この水を飲めば永遠の美しさを手にすることができる、観音さまはそう言ったのだから…。たつこは泉の水を手ですくい、一口また一口と飲み続けます。すると不思議なくらい全身に力がみなぎり、また飲むほどに喉の渇きが増して…。ハッと気がついた時は既に両手にウロコがはえ、水面に映る姿は大きく口が裂けた悍ましい龍へと変化していました。この霊泉が田沢湖に、たつこは湖の龍神となり今に続きます。

 ところで、木陰でたつこの変化を見ていた友だちが里の母に始終を伝えたこと、これを聞いて母は驚き集落の男どもに助けを求めたこと、娘の捜索は松明をかざして夜も行われたこと、明け方に松明の燃え残りがクニマスになったこと…など、伝説はさらに展開します。どうぞ皆さま、興味本位で泉の水を飲んだりしませんように…。

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