2016年1月4日月曜日

年頭のあいさつで

本日午前中に行った市役所での年頭訓辞の内容です。市民の皆様にもお伝えし、思いを共有いただければと思います。

~職員の皆様には日頃から仙北市民の日常をお支えいただき、心からの感謝を申し上げます。仕事始めにあたり、2点についてお話しをします。

 1点目は、地方創生についてです。日本創世会議の人口ビジョン、増田レポートと言われていますが、この中で仙北市は、2040年までに無くなってしまう可能性がある市町村に数えられています。分析の根拠などは専門家からも賛否両論です。しかし国が設置した「まち・ひと・しごと創生本部」だったり、同本部が推進する「総合戦略」や「人口減少対策」に、大きな影響をもたらしたことは確実です。

 ちょうど一年前、石破茂大臣は次のように発言しています。
1.2020年までの5年間で、地方での若者雇用30万人分の創出などで地方における安定的な雇用を創出する。
2.現状、東京圏に10万人の転入超過があるのに対して、これを2020年までに均衡させるための地方移住や企業の地方立地の促進などで、地方への新しい人の流れをつくる。
3.若い世代の経済的安定や、「働き方改革」、結婚・妊娠・出産・子育てについての切れ目のない支援などにより、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望を叶える。
 いつの時代も日本を変えてきたのは地方です。そして地方創生は日本創生です。国と地方が、国民とともに基本認識を共有しながら総力をあげて取り組むことで、新しい国づくりを進め、この国を子や孫、更にはその次の世代へと引き継いでいこうではありませんか…。と、このようなお話しでした。さらに昨年7月の地方創世特区視察で仙北市を訪れた際は、「仙北市が国の形を変えるトップリーダーになって欲しいと、指定に踏み切ります。それだけの資源があることを、仙北市を訪問し、実際に目の当たりにして確信することができました」と、発言されています。

 私たちの仙北市は、向こう10年間の新総合計画を平成28年度から運用します。仙北市版総合戦略や人口ビジョンも同時期に発効となります。他にも重要な計画が幾つもありますが、これら全ては「仙北市の生き残り戦略」です。私たちが、これまでの役所経験で慣れ親しんだ「計画づくり」とは次元が違う位置づけです。その芽出しを新年度でしっかり予算化する、これが仙北市の生き残り戦略・挑戦の第一歩です。

 ところで、増田レポートは東京23区の中で豊島区も消滅可能都市だと指摘しています。これまで都会に住む人の多くは、街の生き残りは過疎化が進む地方だけの問題と高を括っていましたが、もはや日本という国はここまで来ていると警鐘を鳴らしています。
 もう少し詳しく説明をすると、増田レポートの論拠は何かですが、20~39歳の女性の人口が5割以上減少することが指標になっています。これをベースに、仙北市も含め全国の約半数の自治体が消滅することを、統計学の観点から示したものです。
 したがって単純に考えると、増田レポートへの対抗策は、女性の活躍の場をつくれるか否かによります。この流れがあって、昨年末に発表となった国の補正予算では、子育て環境の改善や産業育成に大きく財源を配分することを打ち出しました。
 予測としては、子育て環境の改善に努力する自治体に、緩やかに国内人口の流動が起こると言われています。秋田県は小・中学校の学力が日本一ですから、この優れた教育環境とセットで対策を強化すれば、人口減少を鈍化させる手法になり得ます。ただし国内でパイの取り合いに終わってしまう、そんな可能性も高いと考えなければなりません。これでは抜本的な人口対策にはならない訳です。
 そこで考えられる人口対策の1つに、外国からの移民政策があります。私は先月、都内で開催された政策シンポジウム「地方創生と外国人」にパネリストとして出席しました。仙北市の地方創生特区では、温泉と医療の連結を進めるため、外国人医師の招へいを提案しています。この関係でお声がかかったわけですが、ここで、今後は特に地方の外国人雇用を進めるべきとお話しました。
 もちろん一足飛びに進むものではないと思います。しかしながら、幸いにも仙北市は、現状でも国外からの観光客を県内で最も多くお受け入れしている優位性があります。少なくとも他の自治体よりは「選んでいただける素地」があると言うことです。昨年12月の市議会に提案したインバウンド対策事業は、決して外国からの観光客の増加だけを狙ったものではありません。既に北海道の倶知安町やニセコ町では、観光から定住の動きが顕在化しています。国際結婚が進み、幼稚園や小学校にその子供たちが通う日常があるのです。仙北市もそうなれる可能性が十分あります。

 そこで仙北市の戦略ですが、先ず子育て支援策を全国トップクラスまで押し上げ、地域内教育力の維持向上を図り、女性の社会進出環境を整え、同時進行で産業構造の転換と基盤整備を進め、市民の自治意識を高め、世界に開かれたまちづくり、国内のパイの取り合いだけに留まらない国際化、これらをキーワードに、短期的には総合戦略5ヶ年で新たなまちの輪郭づくりを進め、総合計画10ヶ年で修正を図りながら、仙北市の存在の意義を明確化したいと考えています。

 様々な意味合いから今年は大変に重要な一年になります。昨年の事件・事故対策をさらに進めながら、石破大臣が指摘した「縦割り意識」や「重複事業・作業」を排除することを、常に意識して仕事にあたってください。福祉・健康・医療・上下水道・ゴミ処理などなど、基本的なライフラインの一つ一つを、「本当にこれでよいのか、さらに改善することで、ここに暮らす満足度を高められないか」と、全ての職域で変革の種を探る作業を反復して欲しいと思っています。また市民の皆様には、まちづくりの担い手として活躍をいただくため、市役所との情報共有が不可欠です。どうか各部局においては、市民に対して徹底した情報発信をお願いします。
 地方創生特区でダブル指定となった近未来技術実証特区は、この2月に開催予定の区域会議で、ドローンの実証実験を全国で始めてスタートさせたい思いで、国内ドローン製造業界・ソフトウエア業界などとタイアップの準備を進めています。
 現在は、これら仙北市の地方創生を統括する人材の確保、また温泉と医療を連携させる医師の招へい、さらには新病院も完成することを見込み、新たな病院事業管理者の確保など、基本的なベースづくりに全力で当たっています。組織再編も含め、当初予算編成作業と同時進行で骨格づくりを進めたいと思っています。

 2点目は、仙北市の価値についてです。これまで至る所でお話にのぼるように、仙北市は県内はもちろん、全国的に見ても、その資源・潜在能力は抜群に高いことは明らかです。県内の市町村長からは「仙北市はうらやましい」と再三にわたりお話をいただきます。武家屋敷・温泉・田沢湖・グリーンツーリズム・秋田駒ヶ岳・多様な食材・秋田新幹線・秋田内陸縦貫鉄道・伝統芸能・お祭り・おもてなしの市民性…、どれか一つでもあったらと、これは決してリップサービスではない心の底からの声と受け止めています。これらを高度活用することが、私たちは残念ながら未だにできていません。優れた財産があっても高度活用どころか、逆に様々な事故や事件で、私たち自身で仙北市の評価を下げている実態があるのではないか、そんな思いを抱いています。

 毎年、様々な機関から「住みたい街ランキング」が発表されます。例えばですが、生活ガイド・ドットコム2014版では、
・1位 神奈川県横浜市
・2位 京都府京都市
・3位 北海道札幌市
 でした。
 全国的に観光で認知度の高い街がベストスリーに入っています。
 また住宅情報サイトのスーモ2015版では、
・1位 東京都世田谷区
・2位 東京都港区
・3位 東京都目黒区
 がトップスリーです。
 これは住宅と生活環境に着目した調査で、生活の質を重視した内容です。
 また東洋経済が分析した「住み良さランキング2015版」では、
・1位 千葉県印西市
・2位 愛知県長久手市
・3位 石川県能美市
 となっています。こちらは街の総合力、例えば防犯や介護、病院、学校、公共交通の充実度などからのランキングです。
 様々な視点があって様々な分析となっていますが、共通項があります。いずれも自治体がしっかりとした行政運営を行っていると言う評価です。たぶん住民との信頼関係も高いものと推察します。行政が全てやってあげているみたいな思い上がりは、もちろん禁物です。ただ仙北市のような中山間地の小都市は、街の重要な機能を行政が担っている分野も多いのが実情で、これらに携わっているとの自覚を持たなければ、例えば住みたい街のランクインを狙っても、定住・移住は絵空事と受け止められかねません。

 私は、仙北市が有するポテンシャルを考えると、住みたい街ランキングの上位に選ばれても不思議ではないと、本気でそう考えています。観光の知名度、新病院や田沢湖病院、各診療所と福祉の連携で充実する生活防衛対策、新産業の育成、住宅環境や住み良さなどは、向こう数年で目を見張る進展があるはずです。娯楽施設や高等教育機関の開設などは、もう少し時間がかかりそうですが、必ずやランキングに入る街になります。そのために、今、何をしなければいけないか…。皆様、しっかりと考えてください。

 首長の責任が大きいことを、私も改めて肝に銘じます。その上で、先ずは街の価値を落とすような事件や事故を起こさない、微弱な予兆であっても、これを敏感に察知し対策を講じる、この心構えで一年間、職務に邁進する決意が必要です。職員の皆様にも、この一年、仙北市の存在の価値を高めることに、どうか渾身のご努力をお願いします。仙北市の浮き沈みが、秋田県全体の浮沈に直結すると言う覚悟のもと、市民とともに、折れても折れても挫けず、汗を流す一年にしたいと思います。

 最後に、お正月に読んだ本を紹介して終わりとします。
 以前、「置かれた場所で咲きなさい」と言う本のお話をした記憶があります。今回紹介する本も著者は同じで渡辺和子さんです。本の題名は「幸せはあなたの心が決める」と言うものです。この本の中に、「求めたものが与えられなくても…」、と言う章があります。さらにその中に、「挫折のすすめ」・「失ったものではなく得たものに目を向けよう」・「人生は思い通りにならないのが当たり前」などの小文があります。機会があったらぜひお読みください。上手くいかなくて当たり前、これが人生です。でも最初から諦めたり、試合放棄はしないでください。何より一生付き合わなければいけない「自分を見捨てない」ことが大切だと、人生の大先輩が指摘しています。私も同感です。

 職場は「楽」でも「楽しい」ものでもありません。これも当たり前です。楽しいと思うようになったら、どこか心の中に甘えや慣れが生まれていると思ってください。私も市長職が楽しいと感じるようになったら辞め時と心に決めています。一人では辛くてしようがないことも、職場にはともに頑張る仲間がいます。一人で抱え込まず、周囲に辛いと声にして打ち明けてください。特に幹部の皆様には、若手を育てること、辛さに負けそうになる仲間の支え合い、助け合いができる職場づくりに、最大の意を配してください。私は、これまでできなかった若手職員との対話を、今年から始めたいと考えています。その際は、時間の捻出にご協力をお願いします。
 元気で明るい職場づくりは、そのまま仙北市のまちづくりにつながります。皆様が市民のために良い仕事をたくさんできる一年となることを心からご祈念申し上げ、年頭のあいさつとします。この1年さらに頑張りましょう。~

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