昔、仙北市の田沢という集落に、身体が大きく力持ちの惣吉という若者がいました。酒と相撲が大好きで、時に暴れることもあったので評判は良くありません。そんなある日…。
羽根坂で野良仕事をしていた娘が悪戯にあったり、集落から酒や鶏が盗まれる事件が起きました。みんな惣吉の仕業だと決めつけます。そこで惣吉は盗人の正体を暴くため、先ずは羽根坂の森に向かいました。森に着いたとたん強い風が吹き、空から天狗がやってきます。惣吉は相撲で勝負を挑みますが、天狗はその前に酒の飲み比べを提案。さっそく呪文を唱え、大うちわで風を起こし集落に向かって飛び立ちました。少しして天狗は村にあった酒樽や鶏を持って帰りましたが、これを見た惣吉は犯人が大天狗だと確信。天狗も惣吉もたらふく酒を飲み酔いました。惣吉は人並外れの大酒飲みでした。この勝負は引き分けになりました。さて相撲の試合になった時、天狗は身体に力が入らず盗み食いで肥えたことも災いし、もうフラフラです。この隙に惣吉は天狗が持っていた大うちわを奪い、とっとと集落に帰ります。
飛ぶことができない天狗は歩いて惣吉の家に来て、何とか大うちわを返してくれと懇願しました。さらに返してくれたら悪戯も鶏や酒を盗んだことも村人に話すと約束。天狗がその通りにしたので、惣吉も大うちわを天狗に返しました。それ以来、天狗は心を入れ替え悪戯も盗みもしなくなりました。改心した天狗が棲み着いた森を、村人は天狗森と呼ぶようになりました。


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