2026年1月15日木曜日

鳥取の布団の話


 小泉八雲と妻のセツ(写真)が残した冬の怪談で、一番に有名なお話は雪女です。怪談と言うよりは悲しい物語ですが、さらに心が痛むお話に「鳥取の布団の話」があります。あらすじは…。

 昔、鳥取の田舎町の小さな宿屋が、一人の行商人を泊めました。その夜、酒を飲んで寝入った行商人は、すぐ近くから聞こえる子どもの声で目が覚めます。「あにさん寒かろう」、「おまえも寒かろう」。行商人は起きて辺りを確かめますが誰もいません。それで横になると、また同じ会話が何度も続きます。朝、行商人は宿屋の主人に、「子どものしつけもできていない、ひどい宿に泊まった」、そう文句を言い宿を立ち去ります。主人は行商人が酒を飲んで寝たので、悪い夢でも見たんだろう、だって宿には子どもはいないのだから…、それくらいにしか思っていませんでした。さて次の晩、一晩泊めて欲しいと別の客が宿屋を訪ねて来ました。主人は快く泊めることとしましたが、夜更けになってから昨晩の行商人と同じ苦情を受けます。この客は酒を飲まないで寝たので、酒のせいの事ではないかも知れない、あの部屋で何かが起きているのかも…、そう考えるようになりました。実は宿の主人は思い当たることがありました。それは客が寝る布団です。あの布団は近くの古道具屋から買い求めたもので、それより以前は誰が使っていたのか分からなかったのです。

 宿の主人はその古道具屋から話を聞きました。何軒も何軒もさかのぼって、やっと布団の出所が分かりました。この布団は二人の貧しい兄弟のものでした。父も母も身寄りもない幼い兄弟が二人で暮らす長屋で、借金のカタに取り上げられた最後の家財でした。雪の降る寒い夜、食べ物もなく、ただ布団に入ってお互いを温め合う二人から、むしり取られた布団でした。さらに大家は二人を雪の中に追い出し、家に鍵をかけ…、翌朝、玄関先で兄弟は凍死していました。そんな二人の情念が染み付いた布団だったのです。

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