2025年8月19日火曜日

梅沢の踊る大猫


 昔、生保内街道から少し入った梅沢集落に年老いた大猫がいました。日中はほとんど寝ていますが夜になると動き出し、軒下に干してあった手ぬぐいを肩にかけ何処かに出かけます。

 家の者は不思議に思いながら後をついて行くことにしました。どうやら行先は天正寺の境内です。近づくにつれ賑やかな太鼓や笛の音、たくさんの笑い声が聞こえてきました。見つからないよう木の陰に隠れて目を凝らすと…、何やら様々なバケモノが集まり、楽しそうに踊ったり跳ねたりしています。少し手前から手を打ち調子をとる大猫、その音で大猫が来たことを知ったバケモノたちは、「梅沢の大猫が来たぞ。さあ早く踊って見せてくれ」と囃し立てます。大猫はすぐ頬かぶりをして、他のどんなバケモノよりも上手に踊るのでした。

 ビックリした家の者は、気付かれないよう静かにその場を離れました。しかし家に帰ると、その大猫は既に玄関にいて、「オレが踊ったことは誰にも言ってはならないぞ」と、おっかない目で睨み付けるのです。「分かった分かった」と家の者が答えると、安心したようにその場を去って…。その後いったい大猫は何処に行ったか、知る人は誰もいません。
※全国昔話資料集成・角館昔話集(編者:武藤鉄城)

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