2025年8月10日日曜日

お夏の祟り


 昔、角館を治める芦名のお殿さまが院内の大蔵観音をお参りし、その帰り道に神成沢の民家に立ち寄りました。喉が乾いて仕方なかったのです。その家の娘・お夏がお茶を入れお殿さまに差し出すと、その美しさに一目惚れしたお殿さまは…。

 角館の城に出て身の回りの世話をするよう奉公を命じました。嫌でしたが逆らうこともできず…、お夏のお城務めが始まりました。そんなある晩、お城で客人をもてなす酒盛りがありました。お殿さまはお夏を呼び出し、太閤殿下(豊臣秀吉)からいただいた10枚のお皿にご馳走を盛り付けるよう申し付けました。宴会は大成功でした。ところが客人が帰った後、1枚のお皿が割れていることに気づいたお夏は、びっくりしてお殿さまに報告。お殿さまは思い通りにならないお夏をこの時とばかりに罵り、お皿を割ったのはお夏と決めつけ、ついには城内の枯れ井戸に突き落として殺してしまいます。

 それ以降、夜な夜なお皿の枚数を数えるお夏の幽霊が出てお殿さまは狂乱。奥方は土川の小杉山に移り、また息子は病死、さらに3歳になる孫も縁側から落ちて死亡…、芦名家が断絶したのはお夏の祟りだと言われています。その後、お夏が死んだ井戸は夏の井戸、よく洗濯に行った沢は夏埋沢(なつめざわ)と呼ばれるようになりました。


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